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【植物に学ぶキリスト教文化】ボッティチェリ《ザクロの聖母》にみる、果実に込められた象徴

左下:© lisa870 / Adobe Stock 右:Sandro Botticelli《ザクロの聖母》(Public Domain, Wikimedia Commons)
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ザクロ(柘榴)は、多くの種をもつことから「多産・繁栄・豊穣」を象徴すると同時に、キリスト教美術においては受難(血)や復活・永遠の命を示す重要なモチーフとされてきました。

その象徴性を端的に表しているのが、イタリア・ルネサンスを代表する画家サンドロ・ボッティチェリの《ザクロの聖母(Madonna of the Pomegranate)》です。

ボッティチェリ《ザクロの聖母》

ボッティチェリ(1445–1510)は、フィレンツェを拠点とした盛期ルネサンスの画家で、《春(プリマヴェーラ)》や《ヴィーナスの誕生》など神話画の傑作でも知られています。

宗教画においては、聖母子像に優美さと精神性を融合させた作品を多く残しました。

そのひとつ《ザクロの聖母》では、聖母マリアが幼子イエスにザクロを持たせる姿が描かれています。
穏やかな母子像の中で、この果実が静かに深い意味を担い、受難と復活の物語を暗示しています。

所蔵:イタリア・フィレンツェ、ウフィツィ美術館

ザクロの聖母(Madonna of the Pomegranate)

ザクロの聖母(Madonna of the Pomegranate)

出典:Wikimedia Commons / Sandro Botticelli(Public Domain)

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ザクロの象徴性

ザクロの実と深紅色の種子

ザクロの実と深紅色の種子


出典:lisa870 / Adobe Stock

多産と繁栄

果実の中に無数の種を持つザクロは、豊かさや命のつながりを表す果物として古代から尊ばれてきました。

受難と犠牲

赤い果汁や割れた果実の姿は、キリストの流した血を暗示しており、やがて訪れる受難を象徴しています。

復活と永遠の命

無数の種子は新たな命の芽生えを想起させ、死と再生、そして永遠の命を象徴するものとして捉えられました。
このようにザクロは、単なる果実以上の意味を帯び、聖母マリアと幼子イエスの姿を通して、信仰の奥深さを伝えるモチーフとなっているのです。



まとめ

ザクロは、植物としては夏の花と秋の実を楽しませてくれる身近な果樹ですが、キリスト教美術の中では
・「命と犠牲」
・「受難と復活」

を象徴する重要な果実として描かれてきました。

ボッティチェリの《ザクロの聖母》は、その象徴性を最もよく表す作品のひとつであり、植物と宗教、そして芸術が結びついた美しい例だと思います。

幼子イエスの手に握られたザクロ ― 受難と復活を象徴する果実

幼子イエスの手に握られたザクロ ― 受難と復活を象徴する果実(部分拡大)


出典:Wikimedia Commons / Sandro Botticelli(Public Domain)

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ザクロは美術や宗教の象徴として描かれるだけでなく、身近な果樹としても親しまれています。

花や実の特徴については、こちらの記事でご紹介しています。




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