朱色と青緑|神事の装束に学ぶ日本の伝統色

朱色と緑青
Column

白馬神事で目にした朱色と青緑

先日訪れた 住吉大社 の白馬神事。
その折に目にした、神馬の装束と神職の衣装の色合いが美しく、とても印象に残りました。
神馬の装束に用いられた朱色と、手綱を引く神職の衣装に見られる、青緑。

神事の最中に強く意識していたわけではありませんが、あとから写真を見返すうちに、その色が自然と心に残っていたことに気づきました。

白馬神事で印象に残った日本の伝統色

白馬神事で印象に残った日本の伝統色

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こうして色について考えてみると、神社や仏閣でよく目にする配色であることに気づき、少し調べてみました。



朱色 ― 神聖さと魔除けの色

朱色は、神社の鳥居や社殿にも見られるように、日本では「神聖さ」や「魔除け」を表す色として使われてきたそうです。
太陽や火を思わせる力強さがあり、場を清め、日常とは異なる空間を示す色として、宗教的な儀式や建築に用いられてきました。

また、朱色には防腐作用もあるとされ、古墳の内壁や壁画などにも使われてきたことが知られています。

こうして日本各地の神社の風景に見られる朱色も、そうした意味を今に伝えているように感じられます。

伏見稲荷大社の千本鳥居にみる朱色

伏見稲荷大社の千本鳥居にみる朱色

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この格子状の意匠は、「連子窓(れんじまど)」と呼ばれる形式のようで、外と内を穏やかにつなぐ役割を担っているそうです。

春日大社の社殿に見る、朱色と青緑。

春日大社の社殿に見る、朱色と青緑。

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厳島神社の社殿に見る朱色

厳島神社の社殿に見る朱色

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青緑 ― 神社建築に息づく色

神社の青緑といえば、屋根や格子、造形物などにもよく見られます。

春日大社の万灯籠にみる青緑

春日大社の万灯籠にみる青緑

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この青みがかった渋い青緑は、「緑青(りょくしょう)」と呼ばれる色のようです。
孔雀石(マラカイト)を砕いて作られる顔料で、赤系の丹(朱)に対し、緑系を代表する色として、神社仏閣の建築や彫刻の彩色に使われてきたのだそうです。

また、屋根に見られる青緑は、銅板屋根と呼ばれます。
銅は時間とともに錆び、その表面に生じる緑青が膜のように覆うことで、内部まで腐食が進むのを防ぐ役割を果たしているのだそうです。

出雲大社の社殿の屋根に見る緑青

出雲大社の社殿の屋根に見る緑青

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そうした背景を知ると、神社で目にする青緑は、単なる装飾ではなく、時間の積み重なりや、場を守るための知恵とも結びついた色なのかもしれません。

この色は、神社建築のさまざまな場所で見ることができます。

西宮神社の社殿の屋根

西宮神社の社殿の屋根

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出雲大社の社殿の装飾に見る緑青。

出雲大社の社殿の装飾に見る緑青。

朱色と青緑 ― 反対色で調和する

赤と緑は、カラーコーディネートにおいても、相性の良い組み合わせとして知られています。

反対色にあたるこの二色は、互いの色を引き立て合い、全体として調和を生み出す関係にあるとされています。

朱色と青緑が並ぶ、社殿の回廊。

朱色と青緑が並ぶ、社殿の回廊。

朱色と青緑が並ぶ、社殿の回廊。

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朱色と青緑の組み合わせは、平安時代以降の神社建築に受け継がれてきた配色の一つとも言われているようです。

力強さを持つ朱色と、静けさをたたえた青緑。
二つの色が並ぶことで、場の空気が自然と整えられているように感じられました。



色に学ぶ日本の文化

今回、白馬神事の装束に用いられる色を通して、日本独自の美意識に触れることができました。
色に込められた意味を知ることで、神社や神事の風景が、これまで以上に奥行きをもって感じられます。

《参考》『日本伝統の配色辞典』濱田信義 玄光社 2023.6.2

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・住吉大社の白馬神事についてはこちらで紹介しています。

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