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【バラに学ぶ】景観を彩る修景バラ(ランドスケープ・ローズ)の特徴とは

修景バラ(ランドスケープローズ) - Landscape Rose
Column

バラ園を巡る中で出会った魅力的なバラたち。そのなかでも最近よく目にするのが「修景バラ」や「ランドスケープ・ローズ」という言葉です。気になって調べてみると、これまでのバラのイメージとは少し違った、風景の一部としてのバラの姿が見えてきました。

修景バラ(ランドスケープ・ローズ)とは?

「修景バラ(ランドスケープ・ローズ)」とは、公園や道路沿いなど、景観を美しく彩る目的で植えられるバラのこと。

1輪ごとの美しさを愛でるというよりは、景観との調和や群生による美しさを大切にする、そんなバラたち。
フランス語では「ローズ・ペイサージュ」とも呼ばれ、バラの世界ではこの表現もよく使われています。

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「修景」という言葉自体は、もともと都市計画や造園分野で使われる用語で、自然と調和する景観づくりを意味します。
そこから派生し、1輪1輪のバラの美しさを楽しむというより、環境との調和の中で、“バラの群集を景色の一部、そして風景としてデザインするのに適したバラ”ということのようです。

実際にバラ園で出会ってみると、「風景の中のバラ」という表現がまさにぴったりで、群れて咲くその姿は、一輪ずつを愛でるバラとはまた違った迫力と広がりのある美しさを感じさせてくれます。

修景バラ(Landscape Rose)

修景バラ(Landscape Rose)

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修景バラの魅力が世界でも評価

2022年10月に開催された「第19回世界バラ会議(アデレード大会)※1」では、修景バラの代表的な品種〈フラワーカーペットローズ〉が「殿堂入りのバラ※2」に選ばれました。
その名が示すとおり、〈フラワーカーペット〉は一輪の美しさではなく、地面を覆うように一面に咲き広がる、まるでバラの絨毯のような景色を思い起こさせてくれるバラです。

※1「世界バラ会議」とは、約40か国のバラの専門家や愛好家が集い、3年ごとに開催される国際的な会議です。
※2「殿堂入りのバラ」は、世界バラ会議によって選出される、世界的に高く評価されたバラを指します。

修景バラ(Landscape Rose)

修景バラ(Landscape Rose)

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長崎県のハウステンボスでは、修景バラを使った景観づくりに、2005年から取り組まれているそうです。
そして2011年には、アジアで初めての「ローズ・ペイサージュ国際コンクール」も開催されました。

参考:ハウステンボスローズペイサージュ 国際バラコンクール 第一回審査会より

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修景バラ(ランドスケープ・ローズ)の特徴

修景バラには、景観に適しただけでなく、育てやすさという点でも魅力があります。以下がその主な特徴です:

《修景バラの特徴》
・手入れが少なく、初心者にも育てやすい
・病気や害虫に強い
・花付きがよく、一房に10〜15輪もの蕾をつける
・フロリバンダ、ミニチュア、クライマー、シュラブなど多様な系統に登場
・寒さに強い耐寒性

こうした特性から、公共空間だけでなく、家庭の庭づくりや花壇にもぴったりのバラとして人気を集めています。

修景バラ – Landscape Rose

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修景バラの品種紹介

ここでは、私がバラ園巡りで出会った修景バラの品種をご紹介します。

ピンクノックアウト

殿堂入りバラ〈ノックアウト〉の枝変わり品種です。
シリーズ全体として知られる「とにかく丈夫で花付きが良い」という特徴は、この品種にも引き継がれています。

インパクトのある名前は、「病気をノックアウトする」という強さを表現したもの。
その名の通り、非常に強健で育てやすいバラとして人気があります。

ピンク ノック アウト – Pink Knock Out

ピンク ノック アウト – Pink Knock Out

品種名:ピンクノックアウト
英 名:Pink Knock Out
作出国:アメリカ
作出者:モンテシノ
作出年:2001
系 統:シュラブ(S)
開花時期:四季咲き

*『殿堂入りバラ』については関連記事をご参照ください。

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ロイヤル・ボニカ

殿堂入りバラ〈ボニカ’82〉の枝変わり品種です。
〈ボニカ’82〉よりもやや濃いピンク色で、ランドスケープローズの中でも特に人気の高い品種のひとつ。

1本の枝に10〜15ほどの蕾をつける特徴があり、群れ咲く姿がとても印象的です。

ロイヤル ボニカ - Royal Bonica

ロイヤル ボニカ – Royal Bonica

品種名:ロイヤル ボニカ
英 名:Royal Bonica
作出国:フランス
作出者:メイアン
作出年:1992
系 統:シュラブ(S)
開花時期:四季咲き

*『殿堂入りバラ』については関連記事をご参照ください。

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ロージーカーペット

絨毯のように地面を覆う咲き姿が、その名前にぴったりのバラです。
やわらかな花色が広がるように咲きそろい、群生する美しさが際立ちます。

足元の低い位置に植えたり、壁面から垂れ下がるように仕立てたりと、さまざまなシーンで景観をやさしく彩ってくれます。

ロージーカーペット(Rosy Carpet)

ロージーカーペット(Rosy Carpet)

品種名:ロージーカーペット
英 名:Rosy Carpet
作出国:オランダ
作出者:Ilsink,P.
作出年:1983
系 統:シュラブ(S)
開花時期:四季咲き

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アスピリン ローズ

修景バラのなかでも、特に美しい花を咲かせると言われる人気の品種です。
名前の「アスピリン」からも想像できるように、病気に非常に強く、育てやすさでも高く評価されています。

実際に、薬のように“効く”ことをイメージして名づけられたとも言われており、その名のとおり、強健さが魅力のバラです。

アスピリンローズ(Aspirin Rose)

アスピリンローズ(Aspirin Rose)

品種名:アスピリン ローズ
英 名:Aspirin Rose
作出国:ドイツ
作出者:タンタウ
作出年:1997
系 統:フロリバンダ(F)
開花時期:四季咲き

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サマーモルゲン

「サマー・モルゲン」は、ドイツ語で「夏の朝」を意味する名前のバラ。
その名の通り、爽やかな夏の風景を思わせるような、小ぶりで可愛らしい花姿が魅力です。

春から晩秋まで長く咲き続ける丈夫な品種で、やさしい彩りを添えてくれる修景バラとして親しまれています。

サマーモルゲン – Sommermorgen

サマーモルゲン – Sommermorgen

品種名:サマーモルゲン
英 名:Sommermorgen
作出国:ドイツ
作出者:コルデス
作出年:1993
系 統:シュラブ(S)
開花時期:四季咲き

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ひなあられ

名前の通り、「ひなあられ」を思わせるような、可愛らしい小ぶりのミニバラです。
地面を這うように広がるため、グランドカバーとしてよく利用されています。

私が訪れたバラ園では、初雪かずらと組み合わせて植えられていて、そのコントラストがとても可愛らしく印象的でした。

ひなあられ - Hinaarare

ひなあられ – Hinaarare

品種名:ひなあられ
英 名:Hinaarare
作出国:日本
作出者:京成バラ園芸
作出年:2001
系 統:シュラブ(S)
開花時期:四季咲き

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修景バラ(ランドスケープローズ)が注目されている理由

先にご紹介した世界バラ会議では、〈ボニカ〉〈ノックアウト〉〈フラワーカーペットローズ〉といった修景バラが「殿堂入りバラ」に選ばれています。
これらが高く評価された背景には、花付きの良さや手入れのしやすさに加えて、環境問題への配慮という、現代的な視点が重視されていることがあります。

花一輪の美しさ以上に、環境に配慮して無農薬で栽培できるバラがこれからの社会では重要…(中略)…世界でもっとも歴史のあるフランスのバガテル国際バラコンクールも同様で、無農薬栽培がコンクールの基準になっています。
引用:白砂伸夫、フラワーカーペットローズ 今、はじまるバラの新しい歴史 My Garden No105 2023年2月 27頁

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散歩道でふと出会った修景バラから、バラの評価のされ方や育て方も、時代とともに変化してきたことを学びました。
そして同時に、環境と向き合う姿勢の大切さについても、改めて考えるきっかけとなりました。

これからも、修景バラの新しい可能性に注目していきたいと思います。

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