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【植物に学ぶ】ソメイヨシノから学ぶ天然樹脂いろいろ

ソメイヨシノ(染井吉野)- 'Someiyoshino' sakura
Column

春の訪れと共に、桜の開花が話題となるこの季節。ソメイヨシノの観察をしている中で、興味深い発見がありましたのでご紹介します。

2024年3月28日時点のソメイヨシノ @大阪市内

2024年3月29日時点のソメイヨシノ @大阪市内


ソメイヨシノの樹脂

ソメイヨシノの幹から出る新芽を観察していると、「ゼリー状の付着物」を発見しました。

ソメイヨシノについた樹脂

ソメイヨシノについた樹脂

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このゼリー状の樹脂の正体を調べてみると、コスカシバ(蛾の一種)など何かしらの害虫の仕業ということがわかりました。この害虫は幹内に侵入し、樹皮下の組織を食べることによって生じる現象なのだそうです。

植物は傷つけられた部分を修復するために樹液を分泌し、自己回復を図っています。この写真のように琥珀色から濃い色まで様々です。

ところで、その“琥珀色”という名前のもとになっている「琥珀」も、天然樹脂が長い年月をかけて化石化したものです。特に松や杉、柏などの樹脂が起源とされ、植物や虫などを包み込んだまま固まった美しい姿で知られています。

この機会に、他の植物が分泌する天然樹脂についても調べてみました。

松の樹液

前述した「琥珀」は、松柏科の樹脂が長年、土砂に埋もれて化石化したものと言われています。琥珀に植物や虫などの包容物がみられるのはそのためです。

植物や虫を含んだ琥珀

植物や虫を含んだ琥珀


出典:Albin Marciniak / Adobe Stock

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「松ヤニ」とは、松の樹脂のこと。古くから人々の暮らしの中で利用されてきました。
その用途は幅広く、スポーツから音楽の分野まで、さまざまな場面で活用されているようです。

松ヤニの主な用途は、滑り止めです。
スポーツでは、バレエのシューズに塗ったり、ボルダリングの滑り止めなどに使われています。
音楽の世界では、バイオリンの弓に松ヤニを塗ることによって、弓と弦に摩擦を生じさせ音が出るのだそうです。

松ヤニの採取については、戦後以降、人手不足などの理由から、アメリカから「トール油」と呼ばれるものを輸入し、国内で加工する形が主流となっているようです。




漆の樹液

漆は天然塗料として知られ、特に黒は「漆黒」として有名です。この漆は、特殊な木を引っ掻く「漆掻き」という技術により採取されます。
ウルシの木の幹に傷をつけて滲み出る樹液をヘラで一滴一滴救って、数日後にまたその次の傷をつけて採取しているのだそうです。

この技術は「漆掻き」と呼ばれ、今も受け継がれています。国内で生産される漆の約7割は、岩手県でつくられているそうです。

楓の樹液

忘れてはならない樹液のひとつに、私たちにもなじみ深いメープルシロップがあります。
メープルシロップは、カエデの樹液を煮詰めて濃縮したもので、カエデの木に穴を開け、流れ出た樹液を集めて作られます。

この写真は、実際にカエデの幹に穴をあけ、メープルシロップのもととなる樹液を採取している様子です。

樹液を採るためにカエデの木に穴を開ける様子

樹液を採るためにカエデの木に穴を開ける様子


出典: Kate Wilcox / Adobe Stock

次の写真では、採取した樹液をバケツに取り込んでいます。

樹液を採るためにカエデの木に穴を開ける様子

樹液を採るためにカエデの木に穴を開ける様子


出典: David Arment / Adobe Stock

この容器に溜まった樹液を煮詰めて、メープルシロップが作られるのだそうです。

白樺の樹液

メープルシロップに並んで、飲料として活用されているのが「白樺の樹液」です。
「バーチウォーター」とも呼ばれ、抗酸化作用やアンチエイジング効果があると言われ、人気を集めています。
飲料のほかにも、ヘアケア商品や石鹸などに利用されています。

採取方法はカエデとよく似ていて、木に穴を開けて、樹液を容器に溜めます。



植物から学んだこと

ソメイヨシノの木で見つけた樹脂から、様々な天然樹脂について学ぶきっかけとなりました。桜の樹脂の活用についてはまだまだ調査中ですが、この発見により、天然素材を活かした伝統工芸や採取技術、意外な活用法などについて知ることができ、私の日常に新たな意味をもたらしました。

ちなみに、ヤマザクラの若葉がほんのり赤みを帯びるのも、アントシアニンという色素によるものです。
これもまた、若葉が自らを紫外線や虫から守るためのしくみとされており、桜の木にはさまざまな“自己防衛の力”が備わっていることに気づかされます。

ヤマザクラの葉が赤くなるしくみについては、こちらの記事でも少しですが触れています。

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桜の樹液(樹脂)は2月から4月くらいに見られるようですので、今年のお花見の際に、桜の樹脂を探してみてはいかがでしょうか?




《参考》
漆、一滴ずつ手作業ですくう 「日本一の里」岩手・二戸市浄法寺町, 朝日新聞デジタル 2024.04.01
あなたの知らない『松脂』の世界, BUNKYO GAKKI, 2024.04.01

※この記事は、関連サイト「Azure Garden」の自然を楽しむブログより移行・再編集したものです。

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