トベラ(扉)|扉を守り花と香りで春を告げる常緑樹

トベラ(扉)- Japanese Cheesewood
Nature

4月〜6月にかけて見られる白や黄色の夏の花です。

トベラの特徴

トベラはトベラ科トベラ属の常緑低木で、日本の沿岸部を中心に広く自生しています。

葉は光沢のある濃緑色で厚みがあり、潮風や乾燥にも強いため、昔から防風林や庭木、生垣に利用されてきました。

トベラの木

防風林や庭木、生垣として利用されました。

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春になると白い花を咲かせ、やがて黄色みを帯びていきます。
その花は甘く強い香りを放ち、春の訪れを告げる存在として親しまれています。

春には白い花を咲かせます。

春には白い花を咲かせます。

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秋には果実が裂け、赤い種子が姿を見せるのも印象的です。

トベラの実

トベラの実

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トベラの実

トベラの実

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トベラの実が弾けた様子

トベラの実が弾けた様子

名前の由来

「トベラ」という名前は「扉」に由来すると伝わります。
古来、枝葉を家の入り口に飾る習わしがあり、邪気を防ぎ家を守る役割を担っていました。
そのため「トビラノキ(扉の木)」と呼ばれたものが、時の流れとともに「トベラ」となったとされています。

節分と魔除けの役割

節分の行事では、戸口に「柊鰯(ヒイラギイワシ)」を飾る習慣が広く知られています。
ヒイラギの鋭い葉は鬼の目を刺し、焼いた鰯の頭の匂いは鬼を遠ざける――その組み合わせが魔除けの象徴でした。

節分に飾る柊鰯(ひいらぎいわし)

節分に飾る柊鰯(ひいらぎいわし)


出典:shironagasukujira/ Adobe Stock

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しかし、ヒイラギは潮風に弱く、沿岸部では育ちにくいため、代わりに常緑で葉が硬く、枝葉を折ると強い匂いを放つトベラが用いられました。
とくに西日本や南西諸島では、トベラが「ヒイラギの代役」として節分の魔除けに欠かせない存在となったそうです。



英語名と香りの二面性

トベラは英語で Japanese Cheesewood と呼ばれます。
これは枝や葉を折ったときに出る独特の匂いがチーズを思わせることに由来します。

一方で春の花は甘く芳しい香りを放ち、枝葉の匂いとは対照的です。
この二面性は文化的にも重なり、日本では枝の匂いが「邪気を祓う力」として受け入れられました。

園芸での魅力

「世界で楽しまれている50の園芸植物図鑑」では、庭を区切る生垣や、刈り込みによるトピアリー仕立てにも適する木として紹介されています。
丈夫で形を整えやすく、観賞性と実用性を兼ね備えた一年中楽しめる植物です。

トベラの基本情報

花名:トベラ(扉)
科名:トベラ科
属名:トベラ属
別名:トビラ、トビラノキ
学名:Pittosporum tobira
英名:Japanese pittosporum, Japanese cheesewood
花期:4月~6月
花色:白、黄色
花言葉:慈しみ、偏愛

トベラの仲間

  • ホーアヴァ

《参考》
・『花しらべ花認識/花検索』アプリ
・ ジェイミー・バターワース 著, 上原ゆうこ 訳 『イギリス王立園芸協会版 世界で楽しまれている50の園芸植物図鑑』 (原書房, 2021年2月)




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