【植物に学ぶ東洋文化】柘榴に学ぶ吉祥文様

柘榴は、多くの種を宿す果実として「多産」「繁栄」「豊穣」の象徴とされ、中国をはじめとする東洋文化の中で吉祥果として親しまれてきました。
やがて日本にも伝わり、婚礼衣装や工芸品などに文様として描かれるようになります。
折枝柘榴 ― 子孫繁栄を願う意匠
「折枝柘榴(おりえだざくろ)」とは、枝についた柘榴の果実と葉をあしらった文様です。
果実が割れて中の種がのぞく姿は、子孫繁栄 の象徴とされ、婚礼衣装や屏風、陶磁器などに取り入れられてきました。
また、赤い果実と緑の葉の対比が映える意匠でもあり、そこには生命力や繁栄を表す意味も込められているようです。
三多 ― 三つの吉祥果
「三多」とは、中国由来の考え方で、仏手柑・桃・柘榴の三つを組み合わせたものです。
これらは中国で「三大吉祥果」とされ、いずれも豊かさを表す果物として知られています。

仏手柑

桃

柘榴
桃 :長寿や不老不死の象徴
柘 榴:子孫繁栄・多産の象徴
三つを合わせることで「福・寿・子孫繁栄」を表し、吉祥の意味をもつ文様として描かれてきました。
実際の活用例は下記参考リンクよりご覧いただけます。
工芸品に見る柘榴文様
柘榴文様は、陶磁器や蒔絵、婚礼衣装など幅広く表現されてきました。
その一例として、明時代の「五彩柘榴文輪花盤(南京赤絵)」があります。
割れた果実から種がのぞく姿が描かれ、繁栄と吉祥 を象徴しています
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日本でもさまざまな工芸品に柘榴文様が取り入れられてきました。
こちらはその一例として、伊万里焼に見る柘榴文様です。
東洋文化における吉祥果としての意味が、日本の工芸にも息づいていることがわかります。

伊万里焼に描かれた柘榴の文様
出典:Masaru Niimi / Adobe Stock
まとめ
柘榴は「多産・繁栄・豊穣」を象徴する果実として、東洋文化の中で吉祥文様へと昇華されました。
折枝柘榴や三多といった意匠に込められた意味は、中国から日本へと受け継がれ、工芸や衣装に今もなお息づいています。
《参考》
・『日本の文様 解剖図鑑』 筧 菜奈子著 株式会社エクスナレッジ 2024年2月9日
・五彩柘榴文輪花盤(南京赤絵), 文化遺産オンライン, 2025.8.28
・San duo – “The Three Abundances” motif, Gotheborg,com, 2025.8.27
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柘榴(ザクロ)の花や果実の特徴については、植物紹介編の記事でご紹介しています。