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【バラに学ぶ】世界バラ会議の『殿堂入りバラ(モダンローズ)』を一覧でご紹介

殿堂入りバラ
Column

2025年5月18日(日)から24日(土)にかけて、世界バラ会議が日本・広島県福山市で開催されます。
世界中のバラの専門家や愛好家が集うこの国際会議では、「殿堂入りバラ」の選出も注目のひとつ。
これは、世界中で長く愛されてきた名花に贈られる〈殿堂入り〉の称号です。

今回は、その歴代バラの一覧をご紹介します。

世界バラ会議ってどんな会議?

イギリス・ロンドンに本拠地を置く『世界バラ会連合(The World Federation of Rose Societies)』が、3年に一度開催する国際会議です。
50年以上の歴史を持ち、現在(2025年4月時点)では40カ国が加盟しています。

世界バラ会連合って、どんなことしてるの?

世界バラ会議では、加盟国のバラ愛好家や専門家たちが開催地に集まり、次のような活動を行っています:

・バラに関する知識の普及と啓発
・育種や栽培に関する研究の促進
・バラの分類や審査基準の整備・標準化
・国境を越えた愛好家同士の交流と親善
・各国の情報や育種ノウハウの交換

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《世界バラ会議で発表される主な賞》
『殿堂入りバラ(モダンローズ)』や『殿堂入りオールドローズ』、そして、世界中の美しい庭園に贈られる『優秀庭園賞』などが発表されます。

※〈モダンローズ〉…1867年に発表された『ラ・フランス』以降の、四季咲きのバラを含む系統。
※〈オールドローズ〉…1867年以前に作出された、原種系統をもつ一季咲きのバラ。



殿堂入りバラ(モダンローズ)について

世界バラ会議の注目イベントのひとつが、『殿堂入りバラ』の選出です。
この〈殿堂入りバラ〉は、世界中で長く愛されてきた優れた品種に贈られる称号で、以下のような基準に基づいて選ばれています。

・世界中のさまざまな環境で育てやすい
・多くの国で長く親しまれている
・国や文化を越えて、美しいと感じられる
・病害虫に強く、環境に配慮した育てやすさ(近年は特に重視)

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〈殿堂入りバラ(モダンローズ)〉の選出には、その時代の社会的背景や価値観が色濃く反映されています。
特に近年(2018年・第17回以降)は、「美しさ」や「病害虫への強さ」といった見た目や管理のしやすさに加え、農薬に頼らない環境への配慮も評価の対象となっています。

また、修景バラ(ランドスケープローズ)の選出が続いていることからも、いまは一輪の華やかさだけでなく、風景の中での調和や景観としての美しさが求められていることがわかります。

時代ごとに選ばれた〈殿堂入りバラ〉には、そのときどきの暮らしや社会の意識が映し出されていて、ひとつひとつに学びや気づきがあります。



殿堂入りバラ一覧

ここでは、私がバラ園巡りで実際に出会った『殿堂入りのバラ』たちを過去の大会情報と合わせてご紹介します。

【第1回大会】 1971年 ニュージーランド ハミルトン大会 選出なし
【第2回大会】 1973年 アメリカ シカゴ大会 選出なし

殿堂入りバラの選出は、大会の初回から行われていたわけではないようです。
その経緯については調べきれなかったのですが、世界バラ会議の開催を重ねるなかで、次第に制度として定着していったのではないかと考えています。

【第3回大会】ピース

1976年 イギリス オックスフォード大会

殿堂入り第1号を飾った〈ピース〉は、第2次世界大戦の終戦を迎えた1945年に、平和への願いを込めて名づけられました。
優雅な花姿とその背景から「20世紀を代表するバラ」とも称され、今も国際会議などで、平和の象徴として飾られることがあります。

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ピース – Peace

ピース – Peace

品種名:ピース
英 名:Peace
作出国:フランス
作出者:メイアン
作出年:1945
系 統:ハイブリッド・ティー(HT)
咲き方:四季咲き
香 り:微香

【第4回大会】クイーン エリザベス

1979年 南アフリカ プレトリア大会

その名にふさわしく、スッと真っ直ぐに伸びた茎の先に咲く大輪の花が、ひときわ印象的です。
高さは2メートルほどに達することもあり、その堂々とした花姿は、まるで女王のような気品を漂わせています。
この品種は、第9回大会で殿堂入りを果たした『パスカリ』の交配親としても知られています。

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クィーンエリザベス – Queen Elizabeth

クィーンエリザベス – Queen Elizabeth

品種名:クイーン エリザベス
英 名:Queen Elizabeth
作出国:アメリカ
作出者:ラマーツ
作出年:1954
系 統:グランディフローラ*(GR)
咲き方:四季咲き
香 り:強くはないが甘い香り



【第5回大会】ドゥフトボルケ

1981年 イスラエル エルサレム大会

〈ドゥフトボルケ〉とは、ドイツ語で「香りの雲」という意味。その名の通り、その香りと美しさが高く評価された品種です。

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ドゥフトボルケ – Duftwolke

ドゥフトボルケ – Duftwolke

品種名:ドゥフトボルケ(フレグラント・クラウド)
英 名:Duftwolke(Fragrant Cloud)
作出国:ドイツ
作出者:タンタウ
作出年:1963
系 統:ハイブリッド・ティー(HT)
咲き方:四季咲き
香 り:強香

【第6回大会】アイスバーグ

1983年 ドイツ バーデンバーデン大会

〈アイスバーグ〉は英語で「氷山」を意味し、ドイツ語では「シュネーヴィッツエェン(白雪姫)」という別名もあります。
どちらの名からも、白さの際立つ美しさが感じられる、20世紀を代表する品種のひとつです。

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アイスバーグ - (Iceberg)

アイスバーグ – Iceberg

品種名:アイスバーグ
英 名:Iceberg
作出国:ドイツ
作出者:コルデス
作出年:1958
系 統:フロリバンダ(FL)
咲き方;四季咲き
香 り:香る




【第7回大会】ダブル デライト

1985年 カナダ トロント大会

〈ダブル デライト〉は、「二重の喜び」という意味の名前を持つバラです。
その名の通り、花の美しさと強い香りの両方が楽しめることから名づけられました。
赤に白や黄色の褐色が重なり合う花色は、まるで輝いているかのように見え、バラ園でも遠くから目を引く存在です。

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ダブル デライト - Double Delight

ダブル デライト – Double Delight

品種名:ダブル デライト
英 名:Double Delight
作出国:アメリカ
作出者:スイム&エリス
作出年:1977
系 統:ハイブリッド・ティー
咲き方:四季咲き
香 り:強香

【第8回大会】パパ メイアン

1988年 オーストラリア シドニー大会

黒バラの銘花として知られる〈パパ メイアン〉。
ベルベットのように深く澄んだクリムゾンの花色と、甘く強い香りが特徴です。
フランスの育種家アラン・メイアンが、祖父アントワーヌ・メイアンに捧げた一輪としても知られています。

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パパ メイアン - Papa Meilland

パパ メイアン – Papa Meilland

品種名:パパ メイアン
英 名:Papa Meilland
作出国:フランス
作出者:メイアン
作出年:1963
系 統:ハイブリッド・ティー(HT)
咲き方:四季咲き
香 り:強香



【第9回大会】パスカリ

1991年 北アイルランド ベルファスト大会

第4回大会で紹介した『クイーン・エリザベス』の子品種で、交配親は Queen Elizabeth × White Butterfly。
〈パスカリ〉とはは、キリストの復活祭に捧げられる純白の花に由来しています。

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パスカリ – Pascali

パスカリ – Pascali

品種名:パスカリ
英 名:Pascali
作出国:ベルギー
作出者:ランス
作出年:1963
系 統:ハイブリッド・ティー(HT)
咲き方:四季咲き
香 り:ほとんどない

【第10回大会】ジャスト・ジョーイ

1994年 ニュージーランド クライストチャーチ大会

〈ジャスト・ジョーイ〉は、アプリコット色の大きな花を咲かせる強健な品種として知られています。
花付きもよく、次々と咲き続けるのが特徴で、秋には色味がより濃くなる傾向があります。

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ジャスト ジョーイ - Just Joey

ジャスト ジョーイ – Just Joey

品種名:ジャスト・ジョーイ
英 名:Just Joey
作出国:イギリス
作出者:カント オブ コルチェスタ社
作出年:1972
系 統:ハイブリッド・ティー(HT)
咲き方:四季咲き
香 り:強香



【第11回大会】ニュー・ドーン

1997年 ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ ベネルクス大会

〈ニュー・ドーン〉は、それまでの木立性のバラとは印象の異なる、つるバラの殿堂入り品種です。
やわらかなピンクの花がアーチやフェンスに咲き広がる姿が印象的です。

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ニュードーン - New Dawn

ニュードーン – New Dawn

品種名:ニュー・ドーン
英 名:New Dawn
作出国:アメリカ
作出者:サマーセット・ローズ・ナーセリー
作出年:1930
系 統:ラージ・フラワード・クライマー(LCl)
咲き方:繰り返し咲き
香 り:香る

【第12回大会】イングリッド・バークマン

2000年 アメリカ ヒューストン大会

〈イングリッド・バーグマン〉は、その名の通り、スウェーデンの名女優にちなんで名づけられたバラです。
美しい花形と深みのある赤が魅力で、うどんこ病にも強く、ガーデンでも育てやすい強健種として親しまれています。

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イングリッドバーグマン - Ingrid Bergman

イングリッドバーグマン – Ingrid Bergman

品種名:イングリッド・バークマン
英 名:Ingrid Bergman
作出国:デンマーク
作出者:ポールセン
作出年:1983
系 統:ハイブリッド・ティー(HT)
咲き方:四季咲き
香 り:微香



【第13回大会】ボニカ ’82

2003年 イギリス グラスゴー大会

〈ボニカ ’82〉は、株全体を覆うように咲く花付きの良さが魅力のバラです。
殿堂入りのほかにも、1983年にはADR、1987年にはAARSといった国際的な賞も受賞しています。

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ボニカ'82 - Bonica '82

ボニカ’82 – Bonica ’82

品種名:ボニカ ’82
英 名:Bonica ’82
作出国:フランス
作出者:メイアン
作出年:1982
系 統:シュラブ(S)
咲き方:四季咲き
香 り:微香

【第14回大会】ピエール・ドゥ・ロンサール

2006年 日本 大阪大会

〈ピエール・ドゥ・ロンサール〉は、『つるバラの女王』とも称される、優雅な印象のバラです。
クリーム色の花びらの中心にふんわりとピンクが差し、見る人を惹きつける美しさがあります。

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ピエールドゥ ロンサール - Pierre de Ronsard

ピエールドゥ ロンサール – Pierre de Ronsard

品種名:ピエール・ドゥ・ロンサール
英 名:Pierre de Ronsard
作出国:フランス
作出者:メイアン
作出年:1987
系 統:ラージ・フラワード・クライマー(CL)
咲き方:返り咲き
香 り:香る



【第14回大会】エリナ

2006年 日本 大阪大会

〈エリナ〉は、半直立性の大輪種で、アイボリーイエローのやわらかな花色が特徴です。
どこか気品を感じさせるたたずまいで、控えめながらも、しっかりとした存在感があります。

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エリナ - Elina

エリナ – Elina

品種名:エリナ
英 名:Elina
作出国:イギリス
作出者:ディクソン
作出年:1983
系 統:ハイブリッド・ティー(HT)
咲き方:四季咲き
香 り:香る

【第15回大会】グラハム トーマス

2009年 カナダ バンクーバー大会

〈グラハム・トーマス〉は、イングリッシュローズの代表格ともいえる品種で、明るい山吹色のカップ咲きが特徴です。
ティーの香りを持ち、つるバラとしても楽しめることから、庭を彩るバラとして長く親しまれています。

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グラハム トーマス - Graham Thomas

グラハム トーマス – Graham Thomas

品種名:グラハム トーマス
英 名:Graham Thomas
作出国:イギリス
作出者:オースチン
作出年:1983
系 統:S(ER)
咲き方:返り咲き
香 り:香る



【第16回大会】サリーホルムズ

2012年 南アフリカ ヨハネスブルグ大会

〈サリー・ホルムズ〉は、クリームがかった白の花色がやさしい印象のバラです。
咲き始めはほんのりピンク色を帯び、咲き進むにつれて白く変化します。
大輪の一重咲きで、ボール状にふんわりと房咲きになる姿が特徴です。

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サリーホームズ - Sally Holmes

サリーホームズ – Sally Holmes

品種名:サリーホルムズ
英 名:Sally Holmes
作出国:イギリス
作出者:ホルムズ
作出年:1976
系 統:シュラブ(S)
咲き方:繰り返し咲き
香 り:微香

【第17回大会】カクテル

2015年 フランス リヨン大会

〈カクテル〉は、一重咲きの赤いバラで、咲き進むにつれて花の中心が黄色から白へと変化します。
ひとつの花の中にいくつもの色が重なる姿が美しく、その印象から「カクテル」と名づけられました。

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カクテル - Cocktail

カクテル – Cocktail

品種名:カクテル
英 名:Cocktail
作出国:フランス
作出者:メイアン
作出年:1957
系 統:シュラブ(S)
咲き方:繰り返し咲き
香 り:微香



【第18回大会】ノック・アウト

2018年 デンマーク コペンハーゲン大会

〈ノックアウト〉は、ショッキングピンクの花色が目を引く、インパクトのあるバラです。
名前の由来は「病害虫をノックアウトするほどの強さ」からで、その丈夫さと育てやすさが高く評価されています。
この他にも〈ピンクノックアウト〉〈ダブルノックアウト〉〈ホワイトノックアウト〉など、シリーズとしても展開されています。

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ノックアウト - Knock out

ノックアウト – Knock out

品種名:ノック・アウト
英 名:Knock out
作出国:アメリカ
作出者:ラドラー
作出年:1999
系 統:フロリバンダ(FL)
開花時期:四季咲き

【第19回大会】フラワーカーペットローズ・ピンク

2022年 オーストラリア 大会

〈フラワーカーペットローズ・ピンク〉は、前回大会で選ばれた〈ノックアウト〉とは対照的に、やわらかな印象の名前が特徴です。
「フラワーカーペット」「ローズ」「ピンク」と、わかりやすい言葉が並ぶ名付けからも、美しいピンクのバラの絨毯をイメージさせます。
広がるように咲く姿は、修景バラを思わせるもので、近年のトレンドも感じさせる品種です。

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まだ出会ってないので、画像更新までお待ちください。
品種名:フラワーカーペットローズ・ピンク
英 名:Flower Carpet Pink
作出国:ドイツ
作出者:ウェルナー・ノアック
作出年:1988年
系 統:フロリバンダ(FL)

【第20回大会】

2025年 日本 福山大会

〈殿堂入りバラ〉の選出は、開催後に発表される予定です。
どんなバラが新たに選ばれるのか、今から楽しみに待ちたいと思います。

なお、第20回世界バラ会議は、2025年5月18日から24日にかけて、広島県福山市で開催されます。
詳細につきましては、《公式サイト》をご覧ください。

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2025年開催予定のため、更新までお待ち下さい。

品種名:
英 名:
作出国:
作出者:
作出年:
系 統:



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. おわりに

いかがでしたでしょうか?
どの〈殿堂入りバラ〉にも、その時代の美しさや背景があり、それぞれにストーリーがあります。
バラ園を巡るなかで、そうした背景を知ることで、花を見る楽しみがより深くなったと感じています。

これからも、新たな出会いや気づきがあれば、ご紹介していきたいと思います。

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※この記事は、関連サイト「Azure Garden」の自然を楽しむブログより移行・再編集したものです。



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