【植物に学ぶ西洋文化】クローバーから学ぶアイルランドと聖パトリック祭

キリスト教文化において、春の行事として広く知られているのがイースター(復活祭)ですが、
春にはもうひとつ、大きな宗教的・文化的イベントが存在します。
3月17日は「聖パトリック祭(St. Patrick’s Day)」。
アイルランド発祥のこの祝祭は、現在では世界各地で行われる春の風物詩にもなっています。
Contents
聖パトリック祭とは?
聖パトリック祭(St. Patrick’s Day)は、アイルランドにキリスト教を広めた守護聖人・聖パトリックの命日にあたる、3月17日に行われる祭日です。
カトリックの宗教行事としての意味を持ち、アイルランドではこの日、緑色をシンボルカラーに街中が彩られ、各地で盛大な祝祭が行われます。
アイルランドの国花「シャムロック」
シャムロック(Shamrock)は、アイルランドの国花とされる植物で、私たちにも馴染み深い三つ葉のクローバーを指します。
一般的には、シロツメクサ(White Clover)の葉がそれにあたり、聖パトリック祭では重要な象徴のひとつとされています。

クローバーはシロツメクサの葉
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アイルランドは「緑の国」として知られていますが、国を象徴するこのシャムロックの緑も、そのイメージを形づくる大切な要素です。
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聖パトリック祭とシャムロック
シャムロックの三つ葉は、キリスト教における「Holy Trinity(三位一体)」の象徴とされています。
「父と子と聖霊は一体である」という教えを視覚的に伝えるために、聖パトリックがこの植物を用いたと言われています。

クローバーの意味する三位一体

アイルランドにキリスト教を布教した聖パトリックは、道端のどこにでも咲いているこのシンプルな形の三つ葉のシャムロックを使って、「三位一体」の教えを解いたと言われています。
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そのため、宗教画などに描かれる聖パトリックは、片手にシャムロックを持った姿で表されることが多いです。

右手に三つ葉のクローバーを持つ聖パトリック
出典:Niall / Adobe Stock
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聖パトリック祭に見るその他のシンボル
アイルランドの妖精、レプラコーン
アイルランドは「妖精の国」としても知られています。
この愛らしいイラストには、聖パトリックとアイルランドの妖精、レプラコーンがビールを片手に聖パトリックデーを祝っています。ふだんは不機嫌そうな表情で描かれることの多いレプラコーンも、この日は笑顔で聖パトリックと共に祝祭を楽しんでいます。

聖パトリックとアイルランドの妖精レプラコーン
出典:ngvozdeva / Adobe Stock
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もう一つのシンボル「ヘビ」
アイルランドには、聖パトリックが島からヘビを追い出したという伝説があります。
しかし実際には、アイルランドにはもともとヘビが生息していなかったとされており、この伝説は象徴的な意味を持つものと考えられています。
それでもこの逸話は、聖パトリックの力や信仰の広まりを示す物語として、今も語り継がれています。

聖パトリックとパトリックに追い出されたと言われるヘビ
出典:ngvozdeva / Adobe Stock
世界各地で行われる聖パトリック祭(St. Patrick’s Day)のパレード
聖パトリック祭に欠かせないのがパレード。
前の章で紹介した妖精レプラコーンの衣装を着た人や民族衣装に身を包んだ楽隊が街を練り歩きます。
この祝日には、アイルランドにルーツを持つ人々も国外から訪れ、アイルランド全土が祝祭ムードに包まれます。
顔に緑のクローバーやアイルランドの国旗をペイントしたり、緑色のものを身につけた人々や装飾で街中が緑色に染まるのです。
私が学生時代、アイルランドに住んでいた時も、何か緑色のものを身につけて友人たちとパレードを見に行き、夜はパブに出かけ、シャムロックが泡に描かれたギネスを飲んで楽しむのが定番でした。
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日本各地でもこのパレードが開催されています。
こちらの写真は数年前に横浜元町で開催された聖パトリック祭の様子です。

聖パトリック祭パレードの様子(@横浜元町)
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国内の聖パトリック祭イベント情報
日本でも毎年3月には、聖パトリック祭に関連したイベントが各地で開催されています。
横浜・元町をはじめ、東京や名古屋、大阪などの都市部では、パレードやアイリッシュ音楽の演奏、マーケットなどが開かれ、街が緑一色に彩られます。
これらのイベントは年度によって日程や内容が異なるため、最新情報はアイルランド大使館の公式サイトでの確認がおすすめです。
アイルランド大使館 | New and events
※この記事は、関連サイト「Azure Garden」の自然を楽しむブログより移行・再編集したものです。
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クローバーの花、シロツメクサ(白詰草)には、かつて繊細なガラス製品を守るために使われていたという、興味深いストーリーがあります。
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