【バラに学ぶ】バラの名前でよく聞く「スヴニール 」とは?

バラ園を散策していると品種名でよく見かけるのがフランス語の『スヴニール(Souvenir)』。
フランス語で『土産物、思い出、忘形見、記憶』などを意味します。

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とくに「Souvenir de 〜」と続く名前は、「〜の思い出に」「〜に捧げて」「〜を偲んで」といった意味が込められています。
後に続く名詞によって、「Souvenir du 〜」「Souvenir d’〜」と形が変わりますが、どれも意味合いは同じです。
今回は、「スヴニール(思い出、捧ぐ)」という名前を持つバラの中からいくつかを取り上げ、それぞれに込められた背景やストーリーを追ってみました。
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Contents
スヴニール ドゥ アンネ フランク Souvenir d’Anne Frank
平和への祈りを込めて「アンネフランク」に捧げられたバラ
第二次世界大戦中、15歳という若さでその生涯を終えたユダヤ人の少女、アンネ・フランクを偲んで名付けられたバラです。
強制収容所で綴られた『アンネの日記』の言葉と願い、そして平和への祈りが、このバラには込められています。

スヴニール ドゥ アンネフランク(Souv. d’Anne Frank)
英名: Souvenir de Anne Frank
作出国:ベルギー
作出者:ヒッポリテ・デルフォルヘ Hippolyte Delforge
作出年:1960年
系統:フロリバンダ(Fl)
咲き方:四季咲き
香り:微香
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アンネのバラに出会ってから、気づいたのですが、私がこれまでに訪れたバラ園では、ほとんどと言っていいほど、このバラが植えられていました。
これは「平和への願い」を伝えるメッセージなのだと感じています。
スヴニール ドゥ ラ マルメゾン Souvenir de la Malmaison
バラの母ジョセフィーヌの「マルメゾン庭園の思い出」
「マルメゾン(Malmaison)」とは、フランス西部にあるマルメゾン城(Château de Malmaison)のこと。
この城は、バラの歴史に欠かせない人物、ナポレオン1世の妻ジョセフィーヌの居城として知られています。
ジョセフィーヌは、この庭園に世界中の珍しいバラを集め、その功績から、彼女は「バラの母」と称されるようになりました。
このバラには、彼女が愛した庭園を偲ぶ思いが込められ、「マルメゾン庭園の思い出(Souvenir de la Malmaison)」と名づけられたそうです。

スヴニールドゥラマルメゾン(Souvenir de la Malmaison)
英名: Souvenir de la Malmaison
作出国:フランス
作出者:ベルーゼ
作出年:1843年
系統: ブルボン(B)
咲き方:四季咲き
香り:強香
「クィーン・オブ・ビューティ・アンド・フレグランス(Queen of Beauty and Fragrance)」という別名からもわかるように、香りもまた、このバラの大きな魅力のひとつです。
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スヴニール ドゥ バーデンバーデン Souvenir de Baden-Baden
「バラの聖地」の名を冠した記憶のバラ
このバラは、作出者であるコルデス社の公式情報によれば、2008年6月にドイツ・バーデンバーデンで命名されたことがわかりました。
バーデンバーデンは、ドイツ南部に位置する高級保養地として知られ、温泉やカジノに加え、毎年「国際バラ新品種コンクール(International Rose Novelty Competition)」が開催される、バラの聖地とも言われる場所です。
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今回の記事のテーマである「〇〇の思い出」という具体的なストーリーは得られませんでしたがその名前が与えられたバーデンバーデンという土地が、バラと深く結びついた場所であることはわかりました。

スヴニール ドゥ バーデンバーデン(ルイの涙)-Souvenir de Baden-Baden
英名: Souvenir de Baden-Baden
作出国:ドイツ
作出者:コルデス
作出年:2000
系統:ハイブリッドティー(HT)
咲き方:四季咲き
香り:強香
フルーティーな香りを持つ、ADR賞をはじめ国際大会でフレグランス賞などを受賞している品種です。
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スヴニール ドゥ ルイアマード Souvenir de Louis Amade
シャンソンの作詞家「ルイ・アマード」に捧げられたバラ
シャンソンの名曲『バラはあこがれ』を作詞したルイ・アマードに捧げられたことに由来します。
原題は「L’important c’est la rose(大切なもの、それはバラ)」という意味のようです。
今ではYouTubeなどでも気軽に聴くことができます。
シャンソンというと、どこかもの寂しげなイメージを持っていましたが、この曲は軽やかで親しみやすく、歌詞がわからなくても、つい鼻歌で口ずさみたくなるような一曲でした。
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「ルイ・アマード」が手がけたこの歌の歌詞が気になり調べてみたところ、とてもわかりやすく訳された素敵な解説に出会いました。
このバラの魅力をさらに深く感じさせてくれる内容でしたので、一部を引用させていただきます。
この歌では、地位や財産などではなく、心の中に持つべきもっと価値ある美しいものをあらわしています
引用元:バラはあこがれ L’important c’est la rose, 朝倉ノニーの《歌物語》, 2023.09

スヴニール ドゥ ルイアマード(Souv. d’Louis Amade)
英名: Souvenir de Louis Amade
作出国:フランス
作出者:デルバール
作出年:1998
系統:シュラブ(S)
咲き方:四季咲き
香り:
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いかがでしたでしょうか?
「スヴニール」と名のつくバラには、まだまだ多くのストーリーが秘められています。
これからも新たな出会いがありましたら、随時ご紹介していきたいと思います。
《参考》
・Souvenir de Baden-Baden, KORDES ROSES, 2023.9
・Why is Baden-Baden also secretly called the “Rose Capital”?, BADEN-BADEN, 2023.9
※この記事は、関連サイト「Azure Garden」の自然を楽しむブログより移行・再編集したものです。(2025.4.24)