ヤマフジが教えてくれること:車窓から出会った、野生のヤマフジの咲く風景

車窓から見た季節の移り変わり
ドライブで高速道路を走っていると、山々が季節ごとにさまざまな表情を見せてくれます。
普段は気づかないような場所に自生植物が顔を出し、「こんなところにこんな植物が咲いていたんだ」と、見つけるたびに「これは何だろう」と興味が湧いてきます。
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たとえば、冬から春にかけては、山桜のやわらかなピンクや、コブシの白い花。
初夏が近づくころには、山の緑の中に藤色が顔を出しています。
秋になると、ススキと一緒に、セイダカアワダチソウの黄色がふわっと広がっている景色にも出会えます。
こんな場所にどんな植物が咲いているのか。
次はどんな風景が見られるのか。
季節ごとに出会える、そんな発見もまた、ドライブの楽しみです。
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今回は、そんな風景の中で目に留まった「フジ(藤)」についてご紹介したいと思います。
フジの種類と特徴
日本に見られるフジは大きく2種類に分けられ、「蔓の巻き方」と「花房の長さ」で見分けることができるそうです。
・ヤマフジ(山 藤) – 蔓は左巻き(反時計回り)で房が短い
蔓の巻き方まで種類によって決まっているとは、自然の不思議を感じます。
今回、車窓から見かけたフジは巻き方までは確認できませんでしたが、房が短く、葡萄のようにまとまっていたので、ヤマフジではないかと思います。

高速道路から見たヤマフジ(山藤)- Japanese Wisteria
手入れされたフジと、野生の咲き姿
フジといえば、「あしかがフラワーパークの大藤棚」が、これまでに見た中で一番印象に残っています。
手入れされた藤は、まるでカーテンのようにやわらかく揺れて、その繊細さがとても美しいものでした。
- 足利フラワーパークの野田フジ
- シロフジ(白藤)- 足利フラワーパークにて
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一方で、今回車窓から見たフジは、巻きつけるものがあればどこまでも広がっていきそうな、野生味あふれる咲き姿。
そこには、繊細さとはまた違う、力強さが感じられました。

車窓から見たヤマフジ(山藤)
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車窓から見たヤマフジ(山藤)
天然記念物に指定されている『大久野のフジ』
この野生のフジに出会ってから、フジについていろいろと調べてみました。
東京都の天然記念物に指定されている「大久野(おおぐの)のフジ」という、樹齢400年の巨木の存在を知りました。
このフジは、樹齢およそ400年。高さは30メートルを超え、幹の太さはなんと3メートルもあるそうです。
まさに「生きた歴史」と呼びたくなるような、圧倒的な存在感があります。
フジは、つる性で自立できない植物。
何かに巻きつきながら上へとのびていき、やがて花を咲かせます。
「蔓がアラカシやスギの木に巻きつく姿は、大蛇がとぐろを巻いているようだ」
と表現されているところにも、蔓がしっかりと巻きついている力強さを感じました。
大久野のフジの詳細についてはこちら
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その自由な咲き方に惹かれつつも、後から野生フジの管理についてのニュースを目にしました。
フジは、その美しさで多くの人を魅了しますが、つる性植物ならではの一面もあります。
特にヤマフジのような野生種は、手入れが行き届かないと他の植物に絡みつき、生育環境に影響を与えることもあるそうです。
地域によっては、山の手入れに関わる人が高齢化により減少し、管理の難しさが課題になっていることを知りました。
何げなく眺めていた自然のうらに、これまで気づかなかった人々の手入れがあったことを、あらためて知る機会となりました。
おわりに
ドライブで走る高速道路の窓の外にも、ふとした瞬間に、見過ごしがちな山の景色が広がっているかもしれません。
自由に咲く花の姿に心を惹かれたり、自然の中にある課題にふと気づいたり。
そんな出会いもまた、季節のひとこまなのだと思います。
今年はどんな学びの景色に出会えるのか、目を向けていきたいと思います。
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フジ(藤)についてはこちらの記事でも紹介しています。